マグダラが好きだった

私はマグダラなマリアが好きだった。
今でもたまに、過去作のDVDが見たくなることがある。
でも、新作発表には絶望した。
気持ち悪くて、一日中吐き気が止まらなかった。
色んな人に愚痴を言って、それでも全然足りなくて、こうして文章に起こすはめになっている。

私の好きだったマグダラを、これ以上汚してほしくなかった。

私のマグダラとの一番最初の出会いは、家庭教師ヒットマンREBORN!が好きだった頃。私の好きな獄寺くんの声優さんと、ディーノさんの声優さんが出ているということで気になった。馬鹿な中学生だったのでTSUTAYAに行ってみたけどなくて、それからしばらくしてそのことも忘れ、2度目の出会いは、私がミュージカルテニスの王子様にハマってから。
テニミュにハマったのは柳生が原因なので、小野田龍之介くんが出てると知り、「マグダラなマリア~マリアさんの夢は夜とかに開く!魔愚堕裸屋、ついに開店~」のDVDを買った。

すごく面白かった。
耳に残る音楽、強烈なキャラクター、アングラな世界観。
アンナさんが服を脱ぐと、男だとわかっているのにドキドキした。チビとハゲが同じ漢字だなんて、これを見るまで知らなかった。語り出したらキリがないほど、隅々まで舐め尽くすように見た。今でも、あの独特の音楽は耳に残っている。

DVDが気に入れば、生でも見たくなるのは自然の摂理で。ちょうど、「マグダラなマリア〜ワインとタンゴと男と女」が神戸に来るということで、見に行った。
アンナさんは相変わらず可愛いし、マルタも可愛いし、歌もストーリーも良かった。
まだ観劇にそれほど慣れていない頃だったのもあって、とんでもなく興奮して、このシリーズは絶対見て行こう、と心に決めたことを覚えている。

次に見たのは、「マグダライブ!!2013」。渋谷のライブハウスで、隣のアイアでやっていた「ママと僕たち」と連日足を運んだ。「ママと僕たち」には、これまた柳生役の味方良介が出ていて、彼はマグダライブも観劇していた。味方くんは元々舞台好きの人だけれど、マグダラは毎公演見ているくらい、好きみたいだった。大好きなマグダラに、味方くんも出てくれればいいのに。なんて、夢物語だと思っていた。

それが叶うことが分かったのは、たった数週間後。秋の新作に、味方良介が出演することが決まった。

嬉しかった。好きなもの×好きなものなんて大好きに最高に決まってる。チーズハンバーグなんか大体みんな好きじゃん。
すごく嬉しくて、楽しみでしかなかった。
学祭とかぶっていて、限りがあったけど、可能な限りチケットを取った。

けれど、その夢は結局潰えた。考え得る限り一番最悪の理由で。私は湯澤幸一郎を、一生許さない。

中止が発表されたとき、その理由が分からなかった。どうして中止になったのか、情報は錯綜し、一部では味方くんや染谷くん、テニミュに出ていた子たちのせいだ、と言われた。湯澤さんのブログで、キャスティングに関する不満に思える発言があったからだ。

悔しかった。
私はテニミュが大好きなので、テニミュが馬鹿にされたあの言葉は心底嫌だったし、味方くんがマグダラに決まったのは、彼の愛が通じたのかと思っていたが、全く違っていたことを知った。

公演中止となり、1枚を残して払い戻した。あまり行く気になれなかったけれど、1回くらい、勇姿を見ておかなければならない気がして。
正直、私が見たかったものではなかったけれど、まさに「show must go on」というような、2週間前に中止が決まり、急遽代替公演が決まった状況にはぴったりな話。
誰もが一生懸命頑張っていて、キュートで、あれはあれで良かったけれど、私は駄目な客なので、中止になった状況がある以上、それほど楽しめなかった。

何よりも一番、後日本来の中止理由を知ったときが一番腹立たしかった。キャストのせいなんかじゃなかった。全部湯澤一人のせいやんけ。
自分の権力を笠に着て法を犯すなんて、一番いやらしいやり方だ。人としてどうかと思う。言ってしまえば、マグダラの世界観には、似た退廃的な空気があるが、その欲求は創作で消化されなければならなかった。決して現実で振るってはいけないものだ。品性下劣。

もう二度と、マグダラに関わらないでほしいと思った。

けれど、その夢さえ、昨日潰えた。
マグダラの新作が発表された。マグダラではないか。マリアさんの出てくるシリーズものが。
勿論、一度過ちを犯したからと言って、それが恒久的に糾弾されるわけではない。社会復帰は、出所した人にとって一番重要なことだろう。

ただ。自分の権力を笠に、性犯罪をした人間に、もう一度全く同じ権力を与えていいのだろうか。
例えば、生徒に対する性犯罪で服役した人間を、出所後再び教師として雇えるだろうか?きっと、そんなことをする学校はないだろう。けれど、それと似たようなことが、ここでは起こり得るらしい。

作品は、果たして作者だけのものなのだろうか。当然、そうなのだろう。けれど、商売をするにあたっては、当然作者だけでは成り立たず、客が必要になる。客にとって大事な作品を、作者が勝手に汚すことは許されるのか?もしかしたら、客が勝手に汚されたと思っているだけなのかもしれない、作者の知ったことじゃないだろうね。別に知ってもらわなくてもいいけど、私は汚されたなって思ったし嫌だなって思った。それだけの話。

唯一良かったことといえば、ネルケじゃなくなったこと。あんだけテニミュの子を馬鹿にするようなことを言われて、損益出されて、続けるような愚か者じゃなくて良かった。正直客は入ると思うよ。でもそれを興行するのは倫理的にどうなんだろうなって私は思う。

別に行きたいという人を否定はしない。どうせ行けば、私だって何だかんだ楽しむんだと思う。でも、行きたいと言えないのは、万が一また傷つくことになったら怖いからだ。全くあの人のことを信じられない。
あとは、好きな子が人質にとられないことを祈るばかりだ。